現代においては、「目は口ほどに物を言う」という話の科学的な根拠がだんだん明らかになってきています。
大脳生理学によって、無意識的な眼球移動の方向から、相手の無意識的な心理の動きを読み取ることができます。
また、視線による相手の心理操作テクニックを知っていれば、相手の意識的な視線の方向から、相手がこちらにどういう反応を求めているのか、相手の狙いを逆読みすることもできてしまいます。
今回は、会話中の相手の視線の動きによって、相手の心理を読み取る技をお伝えします。
視線の動きから相手の嘘を見抜く
人が嘘をつくとき、見ても聞いてもいない話を、言語でつくりあげようとします。言語を司るのは左脳であり、左脳は右半身を支配しています。それゆえ、人は嘘をつくとき、視線が右に動きます。
逆に、反射的に正直に答えるときには、まず脳内のイメージを探ります。イメージを司るのは右脳であり、右脳は左半身を支配しています。したがって、人は正直に答えるときには、視線がまず左に動くのです。
視線の動きから相手が自分の話を聞いているかどうかを見抜く
聴覚の運動神経を働かせようとするとき、視覚と聴覚を司る脳の視覚野と聴覚野が近接しているので、一緒に視線も動きます。周囲の物音に聞き耳を立てて集中するときには、視線は左右に動きます。逆に言えば、視線が左右に動いているひとは、目の前でしゃべっているひとの話をあまり聞いていません。
また、自分の心の中の考えごとに没頭すると、ひとの視線は焦点が定まらなくなってしまいます。そのような場合も、視線が左右に動いているひとは、目の前でしゃべっているひとの話を聞いていないものと判断できます。
視線を自分から先に外すことができないひとの心理を読み解く
ひとと会って話をはじめると、まず、視線をあわせて話をはじめ、話しているうちにどちらかが先に視線を外します。
イギリスの心理学者ブライアン・チャンプネスの実験によると、かかる状況においては、統計的に、能動的で外向的なひとの方が、受動的で内向的なひとよりも、先に視線を外すことが多いという結果が出ています。
視線を先に外すことは、ややもすれば、「貴方の話をよく聞いていない」というメッセージを送りつけることになりかねませんので、本当に内向的なひとは視線を自分から先に外すことが難しいのです。
視線を外すひとの心理を読み解く
相手と目を合わせることが「貴方の話をよく聞いている」というメッセージを送ることになるのですから、「貴方の話は聞く価値もない」ということ言外に示そうとして、意図的に目を合わさないひともいます。
しかし、また別の心理でもって視線を外すひともいます。相手の目を見ないというのも失礼にあたりますが、相手とずっと目を合わせ続けているということも「貴方の話の内容はよく吟味する必要があるのではないかと疑っている」という攻撃的なメッセージを意図せず送ってしまうことになります。
自分の視線の強さに自信のあるひとの場合、「私がまともに視線を合わせると、多くの場合に相手が委縮してしまう」という気遣いでもって、敢えて、意図的に視線を合わせる時間を減らしているということもあります。
1分間あたり32秒間視線を合わせるひとの心理を読み解く
日本大学芸術学部教授の佐藤綾子さん(パフォーマンス心理学)の実験では、1分間あたり合計32秒程度が快適な印象を与えるとの結果が出ています。
そのような統計的な数字も頭の隅においた上で、自分の視線をも会話の武器として活用して、こちらを気分よく話させようとするひとは、相当に人あしらいに長けた頭のいいひとです。
純粋にこちらに対する好意であればいいのですが、そういう頭のいい人は、柳生新陰流の活人剣のごとく、こちらを好きなようにしゃべらせておいて、必要な情報を引き出したり、後から活用できる言質を取ったりすることを狙っている場合があります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、視線から相手の心理を読み解くために、日常の会話で最も使われることが多いであろうテクニックを5つだけ選んで紹介しました。
こういったテクニックが最も必要とされるのは、ビジネスでの交渉の場面のイメージが強いかもしれません。ただ、実際は、友人同士、家族の間の会話といったあらゆる場面で活用する事ができます。
ぜひ、目を凝らして、相手の視線の動きをチェックしてみましょう。今まで気付かなかったあの人の、心の内が、見えてしまう事でしょう。