ドラマの中でよく出てきますね、主人公の女性に嫉妬心を燃やす脇役の女性。
主人公側に感情移入して見ていれば、この脇役女性は、確かに『嫌なヤツ』かもしれませんが、彼女は彼女なりに苦しみ、戸惑い、困っているのだ、と思いませんか?
実は、毎日を真面目に一生懸命過ごしているあなたのような人ほど、周りに嫉妬してしまいやすいのです。そして、嫉妬は、誰でも抱く自然な感情なのです。
さあ、嫉妬という感情を良く知ってうまくコントロールし、あなた自身を磨く糧にしていきましょう。
赤ちゃんも嫉妬する
ママ友と自分を比較して嫉妬してしまうあなたはダメな人? いえいえ! 実は、赤ちゃんですら、『嫉妬』という感情を抱くのだそうですよ。
以下、宇都宮大学教育学部准教授の心理学者・澤田匡人先生のお話、ご紹介です。
『赤ちゃんを対象にした実験があるんですが、お母さんが赤ちゃん以外のものに視線を向けたとします。それが本なら、赤ちゃんは何も思いません。ですが自分と似た形の人形だと、赤ちゃんは嫉妬するんですね。赤ちゃんレベルでも起こることなんです。』
嫉妬するなんて、なんだか心が狭い恥ずかしいことだと思っていませんか?
そうではなく、誰もが抱く普通の感情であると、まずは理解をしましょう。
獲得したい、守りたい
同じく澤田先生が、妬みと嫉妬について説明しています。
妬みは
『人が持っていて自分が持っていないのものを、相手から奪いたい!』
という感情。一方の嫉妬は
『自分が持っているものを人に取られてしまうかもしれない』
という不安の感情を指すのだそうです。
それぞれの感情が出てくる脳の部位から見ると、『妬みは苦痛と同ジャンル』、『嫉妬は不安の発展形』と考えられるのだそう。
言い換えると、妬みは『より高みを目指す』こと、嫉妬は『現状維持』。どちらも人間にとって両方とも大事な機能ですね。
『妬むことで、自分が欲しいものが何かということに気付き、それを手に入れるモチベーションになる。そして嫉妬することで、自分が保持している大事な人やものを失わないようにと気を引き締めることができる。』
また、脳科学者の中野信子先生によると
『妬みと嫉妬があると、個体が生き延びやすくなったり、子孫を残しやすくなる。つまり生物にとって、とても原始的な感情で、このふたつの感情がないと生き残りにくい、か弱い存在になってしまう。』
のだそうです。
でも
『普段から生存のための本能を意識している人はいないですよね。通常の生活のなかでは、妬みや嫉妬の感情はないほうが良い、と思うのは自然なことです。』
と澤田先生は言います。
『個体レベル』と『社会レベル』の葛藤
妬んだり嫉妬といった感情を持つ自分に対して、罪悪感でイヤな気持ちになりますね。生き残るために備わった感情なのに、なぜそうなるのでしょう?
中野先生は
人間の中で『個体レベル』と『社会レベル』が乖離しているから
と言います。
個体レベルではないと困る感情ですが、社会レベルでは、嫌なものとされるものはいろいろあるようです。
わかりやすいのは、浮気。
個体レベルでは『多くの子孫を残したいから、多くのパートナーと交尾したい』と思いますが、社会レベルだとそれは許されません。
『社会的存在の自分』と『個体の自分』を制御する場所が、脳の別の部分にあるから葛藤が生じるのだそうです。
『個体』として生を保とうとする能力は、脳の奥にある『辺縁系』。
そこを、生物が人間になって急激に増大した『前頭前皮質』がコントロールして抑えているのですが、ここにある『前頭前野』が社会性を司っているのだそうです。
嫉妬の対象にしやすい相手
次に、嫉妬の対象にしやすい相手はどんな人か? という方向で考えましょう。
まずは、『自分より性的魅力が高い女性』
なぜか?
どうやら以前の一夫多妻制の影響と考えられるようです。女性は性的魅力で男性を取り合う傾向があるので、自分より性的魅力が高い女性に嫉妬しやすい。但し、一夫多妻制の場合、妻達は同じ空間で仕事や子育てをしなければならないので、嫉妬しつつも表面的には仲よさそうにふるまう必要がありますし、状況によっては協力しなければならない。これって、まるでママ友グループみたいだ! と思いませんか?
そして、女性が決定的に嫌いなタイプは、『自分に似ている人』
女性が嫌う女性は、実は自分と似ているタイプであることが多いそうです。似ていれば似ているほど大嫌いになる。わかるからこそなんだか許せない気持ちになる、というのはよくあることですよね。
嫉妬を起こす:自信のなさ
なぜ嫉妬が起きるのか? その原因の一つにあなたの『自信の無さ』があげられます。
根っこが細く不安定な草花程、雨や風に弱いですね。おなじことが人間にも起きるのです。自信のなさ=あなたがあなた自身を信じられるかどうか? なのです。
自己信頼=自信 なのですから。
あなたにとって、『あなた』は信頼できる人でしょうか?
これは、とても厳しい問いですね。もし、すっきりYesと言えないなら、あなたはあなた自身に大切にされてこなかったのかもしれません。
あなたがあなたを大切にする方法とは?
あなたが大切な友人にしてあげることをすれば良いのです。
例えば、今感じていることをきちんと感じる。本当の気持ちをわかってあげる。約束を守る。褒めてあげる。必要以上に無理をさせない。などなど。
今の状態は、過去の付き合いの積み重ねの結果です。
過去何らかの理由があって大切にできなかったなら、そして本当は大切にしたいなら、今から大切にしてあげれば良いのです。
嫉妬を起こす:不安
嫉妬を起こす原因の二つ目は、『不安』です。あなたはなぜ不安な気持ちを抱くのでしょうか?
旦那が○○だから
子どもが○○だから
親が○○だから
ママ友が○○だから
いろいろ理由はあるでしょう。でも、もう一段奥を見てみましょう。
あなたは、相手に『何をして』欲しいのでしょうか?
私を、私の気持ちを、私のがんばりを、私の気配りを、私の仕事を。
…いろいろな答えが出てくるでしょう。そしてそこに共通するのは『認めてほしい』という気持ちではないでしょうか?
いわゆる『承認の欲求』です。
心理学者アブラハム・マズローは、人間の基本的欲求を下から順に、生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求の5段階に分類しました。
そしてこの『承認の欲求』、実は、自己承認という力で満たされない分だけ周りに求める(他者承認)傾向があるとわかっているのです。
自分を大切にしてあげられれば、少しずつ自信がついてきます。そして自己承認能力も培われます。そうすれば次第に他者に求めなくなっていくのです。
嫉妬を起こす:他人との比較
そうはいっても、自己信頼も自己承認も培う(つちかう)には時間がかかります。そこで今度は、『嫉妬』という感情を感じる時はどんなときか? を考えてみましょう。
心理カウンセラー原裕輝先生によると
『嫉妬』という感情は、自分以外の誰か他の人の影響を受けて感じる感情
なのだそうです。
誰かの影響を受けて嫉妬を感じた時、心を探ると、『その誰かに負けてしまったような感じ』、『敗北感』を感じていませんか?
敗北=『負け』を感じるということは、その誰かと競争があったということになります。
実は、『嫉妬』という感情は、自分の価値を誰か他の人を基準として比べて計ろうとした時、『負け』を感じておこる感情なのです。
ママ友に嫉妬している状態=あなたがそのママ友になんらかで『負けた』と思っている、ということになります。
いったいあなたは彼女に、ナニで負けたのでしょう?
何となくでなく、いったん言葉で感情に形を与えてみると、意外なことがわかったりしますよ。あなたがあなたに対してはっきりさせてあげれば、もやもやと苦しい気持ちは形を変えていけるのです。
まとめ
いかがでしたか?
今、あなたがどうしても嫉妬をしてしまう状態なのであれば、まずは、嫉妬を起こしてしまうその環境から距離を取りましょう。そして、あなた自身としっかり対話してみましょう。
あなた自身に聞いてみてください。
『あなたは本当は何が欲しいの? 』
と。
無理矢理抑えたら、どんな感情だって持ち主に反撃してきます。まずは、自分の中で起きていることを客観的にとらえることが大切なのです。
客観的にとらえて頭で理解ができたら、具体的な解決策が見えてくるはず。感情そのものに罪はないのです。それに翻弄されることが問題なのだと切り分けて考えましょう。
あなたを幸せにできるのは、あなた自身なのですから。