我々は、大きい小さいに関わらず、心に何らかの傷を負って生きている動物といえます。
一度にザックリと大きな傷を負うかもしれません。また、小さい傷が治らないのに何度も何度も負ってしまうかもしれません。
この心に負う傷の事を”トラウマ”といいますが、アメリカの精神医学会は2013年、19年ぶりに改訂した診断マニュアルで、トラウマがこれまで考えられていた以上に幅広く心の病に影響しているとの見解を打ち出しました。
トラウマやそれを要因とする恐怖症の治療方法は、いろいろ試みられ、研究が進んでいます。その中でも、最も効果がある方法の1つが、NLPという脳を多角的に捉えたアプローチ手法です。
今回は、そのNLPの中でも、重要なタイムラインにフォーカスして、NLPタイムラインを効果的に活用するステップアップ術を紹介します。
タイムラインを理解してみよう
NLPは、心理学、言語学、生理学や制御学を中心としたサイバネティクス理論やシステム論などで、脳を多角的に研究・分析した結果に基づいて発展してきた心理学的手法です。
言い換えれば、『 脳の取扱説明書 』といっても過言ではありません。
なかでもタイムラインは、時間の流れを1本のラインとして認識し(実際に床などにタイムラインを引く)、実際にそのライン上を歩きながらいくつかのポイント(過去の自分・現在の自分・未来の自分や、幼少期、青年期などさまざまなポイントを目的に応じて選定する)で感じた事を述べ、追体験を通してその要因と向き合ったり、要因そのものを変化させて、心を軽くし、トラウマや恐怖症を改善・解消させていく手法です。
タイムラインを始める前の注意点
まずは、タイムラインを引いてみましょう。
そして、いきなり核心となる要因や事柄に目を向けるのではなく、NLP的なアプローチに馴れるための試運転を実施してみましょう。
自分を過信して(単にトラウマに触れないようにしているだけなのに、トラウマが癒えていると勘違いする方は多い。)いきなり、核心的な要因にアプローチせざるおえないような場合は、専門家に立ち会ってもらった方が無難です。
感情の起伏が激しくなって、自己をコントロールできない場合がありますので注意しましょう。また、核心的な部分でないにしてもタイムラインを体験した後に心理的な違和感を感じるようであれば、専門家の臨床を受けるようにしましょう。
タイムラインを体に通してみる
タイムライン上のポイントに立った時には、漠然と感じたこと・考えを巡らせてみてもなかなか自分の心理的な深層部分にアプローチはできません。
そこで次のような投げかけを自分にしながら感じてみるようにしましょう。
その問いかけは
- どんな風景(シーンか)
- どんなジェスチャーか(特定の部位、例えば”手”の印象が強ければその部位にこだわったジェスチャー)
- どんな音が聞こえますか
- どんな声がしますか
- 触った時の感触
- 漂ってきた臭い
- 味に関するもの
など、視覚や聴覚、触覚、嗅覚、味覚など人間の5感をイメージしながらシーンをよりリアルに認識していきます。
タイムラインをより自分のモノにする
タイムラインを実際に試してみて、そのポイントでのシーンが5感を用いてよりリアルにイメージできたならば、タイムラインという時間軸を見ている視点を変える訓練をしましょう。
タイムラインの中にいる視点(インタイム)と、過去・現在・未来と続くタイムライン全体を外から見ている視点(スルータイム)です。
インタイムは、ポイントでの思考や集中に効果的に活用できますし、スルータイムは全体を客観的に見たり創造性・計画性の立案などを効果的に行えるようになります。
タイムライン上の過去・現在・未来を行き来できる事と、それを見る2つの視点のイメージが持てる(タイムラインで行き来できる状態をタイムラインに乗ると言います。)ようにトレーニングしてみましょう。
記憶を書き換える
タイムラインに乗れるようになったら、記憶を書き換えてみましょう。
記憶の書き換えというと「虚偽のモノ」「現実ではない」というようなイメージが先に立ってしまうかもしれませんが、人は日常的に物事を誤った感覚で受け入れていることをまず認識しましょう。
よくあるのが
- 情報の一部しか認識できずに他の情報を削除する(「削除」)
- 物事を誤った形で認識する(「歪曲」)
- 一度しか起こっていないことを社会一般的な事と捉え心理的制約を作ってる(「一般化」)
です。
これらを正しながら認識しなおす事が”記憶を書き換える”ことなのです。
書き換えるというフレーズに抵抗がある方は、認識しなおすとでも思っていて頂いて差し支えありません。
タイムラインに乗れるような方でもこのステップは苦労される方も多いので、専門家の指導やトレーニングセミナーなどに参加してコツをつかむことも上達の秘訣です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
最近の研究で、我々の脳は、現実とイメージの違いを区別することができない事が分かってきました。脳は、イメージした事柄も記憶として認識してしまうのです。
スポーツの世界で、イメージトレーニングが重要視されているのもこれが根本にあるからです。
そして、イメージは実行動のパフォーマンスにも大きく影響を与えます。
躊躇しながら行動をしているのは、ブレーキを踏みながらアクセルも踏んでいる状態なので、エンジンも(心も)疲弊していきますし、燃費(パフォーマンス)も良くありません。
タイムラインを活用した記憶の書き換えは、トラウマの解消ばかりでなく、日常でも行動をスムーズに快適に行えるように訓練する方法として最適です。
是非、自分のものにして活用していきましょう。