過食症は、「神経性大食症」という摂食障害のことです。
一度に食べる量がむちゃくちゃな量のため、「むちゃ食い障害」とも言われます。
とにかく食べていないといけないという強迫観念にとらわれ、おなかがすいているわけでもないのに大量に食べ物を食べ、そして、そのすべてを嘔吐または下剤服用で排出することを繰り返す、とても怖い病気です。
自分でその食欲をコントロールすることができないのが、この症状の治療の難しいところでもあります。
今回は、恐ろしい病気や命の危機にもつながりかねない、過食症の原因、症状と、治す方法についてお伝えします。
食べることがストレスや恐怖に? 過食症の主な原因
本来、「食事」とは楽しくて幸せなものです。
家族や友人と食卓を囲み、和気あいあいとおいしい食事をすることは、体のためだけでなく、心の健康のためにも大切なこと。
しかし、過食症になると、食べることに対してストレスを感じたり、恐怖を感じてしまうようになります。
なぜ、このようなことになってしまうのでしょうか?
人は、職場や人間関係、環境などによって、何らかのストレスを必ず受けます。
通常、受けたストレスは、仕事であれば成功経験、人間関係であれば打ち解け仲良くなることなどで解消され、ストレス耐性がついたり、解消方法を自分で見つけることができるものです。
しかし、そのストレスを自分の中でうまく解消できないと、ストレスが溜まってしまい、精神的に弱ってしまいます。
イライラしたり、何かに対して不安や不満を持っていると、ネガティブ思考に陥り、自分に自信がなくなって「どうせ自分なんか・・・」という否定的な考えを持つようになってしまいます。
その心の寂しさや不安を埋めるため、何かを食べることで安心を得ようとする行為に走ってしまうのです。
赤ちゃんの頃、「おなかがすいた」という不安を泣いて訴えると、母親がミルクや離乳食を与えてくれたはずです。
その「不満が満たされて満足した」記憶から、「食べること」で心の寂しさや不安を埋めようとするのです。
誰でも時には、ストレスから一時的に過食になってしまうことはあるでしょう。
食べ放題に行ったり、高級店に行ってみたりして、幸せな食事をすると、「明日からまたがんばろう! 」という活力になります。
しかし過食症になると、食べたことに幸せを感じることができず、大量に過食した後で、食べてしまったことに罪悪感を感じるようになります。
そして、過食をなかったことにするため、嘔吐や下剤の大量服用で食べた物を排出します。さらに過食症が重症化すると、過食・嘔吐を繰り返すようになっていきます。
過食をしているのに、太らずガリガリに痩せている場合は、この排出型の過食症対タイプです。
また、太ることに対して異常な恐怖心を持っている「過激なダイエットをする人」が、逆に過食症を招くこともあります。
太らないために食事を極端に減らしたり、過激な運動をすることで体が栄養失調状態になると、食べ物を過剰に欲するようになります。
過食症において、食欲を自分でコントロールすることはほぼ不可能ですので、食欲に従い、気が済むまで大量に食べ物を摂取します。
しかし、ストレスで過食になったときと同様、ダイエット中にこんなに食べてしまったという恐怖心と罪悪感にかられ、嘔吐や下剤の大量服用をし、食べた物を排出してなかったことにしようとします。
このような理由から、ストレスを溜め続けることと、太ることへの異常な恐怖心を持っていることが、過食症の主な原因になります。
過食症になると、どうなるの?
過食症になると、食欲を自分でコントロールできなくなり、おなかがすいて仕方がないというよりは、ストレスや不安を埋めるために無意識に食べる、気が付いたら大量に食べているという状態になります。
食べていないと不安になり、いつも大量の食べ物を買い込んで持ち歩いたり、家にストックするようになります。
少しでもストレスや不安を感じたら食べ物に手を付け、そのうちストレスを感じたり、不安を感じそうになるのを防ぐために、予防手段としても食べるようになります。
もし、あなたの周りに、大量に食べ物を買い込んだり食べたりしているのにガリガリに痩せている人がいたら、どうしますか?
もちろん、調子を尋ねたり、病院で受診を勧めたりしますよね?
ただ、過食症の人は「食べること」を取り上げられることをとても恐れます。
そのため、過食症が悪化すると、大量に食べ物を買い込んでいることや過食をしている様子を誰かに知られないよう、大量に買い込んだ食べ物を数か所に分けて保管し、隠れて物を食べるようになります。
過食症が引き起こす怖い病気
過食症が慢性化すると、さまざまな病気を引き起こします。
過食症には、先にお伝えした2つのタイプがあります。
- 大量に食べては嘔吐・下剤服用を繰り返す「排出型過食タイプ」
- 多量に食べても排出しない「非排出型過食タイプ」
排出型過食症タイプの人は、必要な栄養も摂れないまま、食べた物をすべて排出してしまうので、ガリガリに痩せています。
一方、非排出型過食タイプの人は、食べた物を排出せず、すべて吸収するので、肥満の人が多く見られます。
それぞれのタイプによって、過食症が引き起こす病気に違いがあります。
排出型過食症タイプの人は、嘔吐や下剤の大量服用に伴う脱水症状、栄養失調、胃酸による口腔内や胃、食道の炎症、同じく胃酸によって歯が溶けたり、虫歯になるという症状が表れます。見た目にも、血色不良、自己嘔吐のために指にタコ(吐きダコ)ができる、栄養不足から肌荒れなどが現れます。
非排出型過食症タイプの人には、急激な体重増加、肥満による成人病、糖尿病などの症状が表れます。一度に大量に食べるため、胸やけや胃痛、胃潰瘍などが起こる場合もあります。
また、どちらのタイプにしても、大量に食べては吐くを繰り返してしまう自分がひどく嫌になったり、太っている自分への自己嫌悪から、逆に食欲がなくなり、食べることができなくなってしまう拒食症(神経性無食欲症)になるケースも少なくありません。
さらに最悪の場合、排出型拒食症による栄養失調から体の生命維持機能が働かなくなって死亡に至るケースや、自己嫌悪から精神のバランスを崩して自殺願望を抱いてしまうこともあります。
食べて吐くだけなら命にまで影響はしないだろうと思われがちですが、自分の異常な様子がわかっていても、自分ではコントロールできない状況に、精神的に参ってしまうのです。
無理は禁物!過食症を治す方法
過食症の治療には、長い時間と忍耐が必要です。
単純に食べることをやめただけでは、過食症は治りません。
無理に食べることをやめたりすると、さらなるストレスで過食が悪化したり、拒食症へつながってしまう危険性があります。
無理に食べることをやめるのではなく、食事の適量を知ることが重要です。
食事の内容についても、必要な栄養が十分摂れているか見直しましょう。
きちんと食べているようでも栄養が十分に摂れていないと、脳が栄養不足を感じて必要以上に食べてしまうことになります。
ストレスが原因で過食をしてしまう場合は、ストレスを溜めない規則正しい生活を送るように生活環境を変えましょう。
睡眠時間を十分に取る、日光に当たる、適度な運動をする、それだけでもストレスはすいぶん改善されます。
対人関係や環境など、自分ではどうすることもできないストレスで悩んでいる場合は、専門科を受診したり、カウンセリングを受けることをお勧めします。
太ることへの異常な恐怖心を持ってしまっている場合は、「太る=恐怖」という間違ったボディ・イメージをなくすため、専門科で認知行動療法を受ける方法もあります。
認知行動療法とは、物事に対する間違った思い込みを直し、正しい受け取り方ができるようにする心理療法です。
「食べる=太る」、「太る=恐怖」というイメージをなくし、「適量の食事を摂っても自分は太らない」という正しいイメージに導くのです。
まとめ
今回は、誰にでも発症の可能性がある「過食症」についてご紹介しました。
時に、ストレスで食べ過ぎたりすることは、悪いことばかりではありません。楽しい食事によってストレスが解消されることもあります。
食べ過ぎることではなく、ストレスや間違った思い込みに対しての改善が必要なのです。
自分に本当に必要なのは何かを見つめ直し、食事を楽しめるようになりましょう。