食事とは、楽しいものです。
家族と和気あいあいと食卓を囲んだり、気の置けない友人たちと楽しい食事会は、生きるための活力を与えてくれると言っても過言ではありません。
おいしいものをおいしいと感じられることは、幸せなことです。
しかし、その食事に興味を持つことや、食事をおいしく食べることができなくなる病気があります。
神経性無食欲症、いわゆる「拒食症」です。
拒食症は、時に命にも関わる重篤な症状につながる場合があります。
今回は、その拒食症を発症する原因と、治療法などについてお伝えします。
食事を摂ることができなくなる原因
拒食症の主な原因は「痩せていることが美しい」という間違ったボディ・イメージを持って始める過激なダイエットです。
「痩せていることが美しい」「もっと痩せたい」「自分は太っていて醜い」と思い込んでしまうことにより、食べることに恐怖を感じ、食事ができなくなってしまいます。
痩せていることを求められる職業、モデル、女優、バレエダンサーは、拒食症になりやすいと言われます。
一般的にはちょうどいい体重だったとしても、人目に付く職業に就いている人の場合は、やせ型の体系を維持することを求められることがあります。
そのような環境にいると、周りを見れば痩せている人ばかりで、まるで自分が太っているかのように思え、「もっと痩せなければ」と精神的に追い詰められることがあるのです。
また、思春期の女の子が成長により、体の丸みや発達を嫌がり、「自分は太っている」と思い込ませて始めたダイエットがきっかけになることもあります。
ぽっちゃりしていることをからかわれたりすると、恥ずかしさから「痩せたい! 」「ダイエットしたい! 」と、強く思うようになってしまいます。
その結果、ダイエットがいきすぎて、拒食症を発症する危険性があるのです。
また、自分に自信がない、自分に否定的なネガティブ思考の人は、拒食症になりやすい傾向にあります。
この場合も、間違ったボディ・イメージが影響し、「痩せている=世間的に有利な自分」をキープすることによって、自信を保つができるので、体重が増えることを極度に怖がります。
多少食べることがあっても、体重が増えることへの恐怖に耐えられず、嘔吐や下剤の大量服用で排出します。
拒食症になるとどうなるの?
拒食症になると、読んで字のごとく、食べることを拒むようになります。
食べることへの関心も興味もなくなり、みるみる体重が減り、栄養不足から血色が悪くなったり、肌が荒れたり、常にぼーっとしていてやる気がわかない状態が表れてきます。
そのような状態になれば、スタイルがいいというよりは、もうガリガリに痩せてしまっています。
しかし、本人は「もっと痩せたい」「自分は太っていて醜い」と思い込んでいて、食事を全く摂ろうとしません。
「食べる=太る」、「太っている=醜い」という間違った思い込みが、さらに拒食症を加速させるのです。
「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-IV-TR)」によると、以下の4つにすべて当てはまると、神経性無食欲症(拒食症)と診断されます。
A. 年齢と身長に対する正常体重の最低限、またはそれ以上を維持することの拒否 (例: 期待される体重の85%以下の体重が続くような体重減少;または成長期間中に期待される体重増加がなく、期待される体重の85%以下になる)
B. 体重が不足している場合でも、体重が増えること、または肥満することに対する強い恐怖
C. 自分の体重または体型の感じ方の障害、自己評価に対する体重や体型の過剰な影響、または現在の低体重の重大さの否認
D. 初潮後の女性の場合は、無月経、すなわち月経周期が連続して少なくとも3回欠如する (エストロゲンなどのホルモン投与後にのみ月経が起きている場合, その女性は無月経とみなされる)
引用元:精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-IV-TR)
拒食症の症状とは?
拒食症になって食べることができなくなると、さまざまな症状が表れます。
- 食べられないことによる極度の体重減少
- 栄養失調
- 手足のしびれ
- 低血圧
- 低体温
- 貧血
- 低血糖症
- 自律神経失調症
- 女性の場合は無月経
などが体に表れます。
食べても嘔吐や下剤の大量使用で排出してしまうタイプの拒食症の場合
- 脱水症状
- 胃酸による口腔内
- 食道の炎症
などが起こります。
また、何事にも無気力・無関心、抑うつ状態、睡眠障害など精神的にも影響を及ぼします。
拒食症が悪化すると、自分で歩くことも、さらには立つことすらできなくなり、低血糖による昏睡、免疫力低下による感染症などの重篤な症状が出る危険もあります。
ブラジル出身のモデル、アナ・カロリナ・レストンという女性をご存知でしょうか?
彼女は一流のモデル事務所に所属し、アルマーニやヴェルサーチなどの世界的に有名なブランドのショーモデルを務めるほどの美貌の持ち主でした。
しかし、ある時をきっかけに、アナは過激なダイエットを始めるようになります。
心配する母に対しても「私は大丈夫」と言い続け、最終的には栄養失調で、21歳の若さで亡くなりました。
彼女は拒食症を患っており、食べては嘔吐・下剤服用を繰り返していたとのことです。
彼女の体重は、174cmの体重に対して40kgしかなかったそうです。
肋骨や背骨の数を数えられ、骨の形がくっきりと見えるほど、やせ細った姿には恐怖すら覚えます。
しかし本人は、そのような姿になってもまだ「痩せたい」と強く思うのです。
拒食症の治療が難しいと言われる理由には、本人が治療を望まないところにもあります。
拒食症の治療は、まず食べて栄養を摂り、体重を増やすこと。
ですから、体重が増えることに恐怖を感じている本人は、治療をしたいと思わないのです。
拒食症の治療方法
拒食症には、認知行動療法が有効です。
認知行動療法とは、物事に対する間違った思い込みを直し、正しい受け取り方ができるようにする心理療法です。
拒食症の治療にまず大切なことは「食べられないことは病気」だということをしっかりと本人に認知させ、「痩せている=良いこと」という間違ったボディ・イメージを改善し、体重が増えることは怖いことではないと理解させることです。
食べることが怖いことではない、と認識すれば、少しずつでも食べることができるでしょう。
拒食症を治すためには、無理は絶対禁物です。
急に食べる量を増やしても、また嘔吐や下剤服用を繰り返すことになります。うまくいかないストレスから拒食症を悪化させてしまうことになりかねません。
自分でうまく調節できない場合は、専門科を受診して、正しい食事量を指導してもらうようにしましょう。
また、自分に対する自信のなさから拒食症を発症してしまう場合は、自分を卑下したり、自己否定をすることをやめ、自分を大切にすることを考えるようにしてください。
太っているからとか、痩せているからという理由で、自分の価値を決めつけないようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?
特に女性は、モデルや女優のスタイルの良さに憧れ、少々過激なダイエットをしてしまいがち。
最初はきっと、1kg痩せたい、3kg痩せたい、と言うところから始まったことでしょう。
しかし、一度体重が落ち始めると、「もっと痩せたい! 」と思うようになり、それがきっかけで拒食症へ発展してしまうこともあるのです。
ダイエットするときには、食べないことにフォーカスするのではなく、生活習慣を見直したり、運動でカロリーを消費して美しいスタイルをキープするようにしましょう。