最近、テレビや雑誌で毎日のように目にする「薬物依存」の文字。
有名な芸能人やアーティストが次々に覚せい剤という薬物使用で逮捕されるニュースが後を絶ちません。
また、覚せい剤のほかにも合法・非合法に関わらず、危険ドラッグを使用して事故を起こしたり、人の命を奪うという事件も多くありました。
とても恐ろしいことです。
薬物や危険ドラッグを使用すると恐ろしいことになる、ということは誰でも知っています。
それなのに、どうして薬物を使用してしまうのでしょう?
今回は、芸能人だけではなく、一般人も陥る薬物依存の症状と治療法、さらに後遺症についてお伝えします。
どうして薬物に依存してしまうの? 時代背景と依存する理由
薬物に手を出してしまう理由やきっかけは、時代背景を反映しています。
そもそも薬物は、戦後の絶望感や貧困など、やりきれない現実から逃れるために使われました。
その後の高度経済成長期に入ると、経済が急成長した半面、社会的な成長についていけず疲れてしまったり、落ちこぼれてしまった人が弱みに付け込まれて使用することが多くなってきます。
そして現代では、経済的に余裕のある人が求めたり、「ドラッグ」と呼び名を変えてファッション感覚で若者の間にもはびこり、大きな社会問題になっています。
薬物、特に覚せい剤の恐ろしいところは、その依存性の強さにあります。
覚せい剤はその名の通り、眠気や疲労感を消し去って、体の各機能を「覚醒」させます。
その覚せい剤を使用したときの気分の高揚や、やる気がみなぎる感じを忘れられないと、薬物を求め、使用を繰り返すことになっていきます。
薬物依存になるとどうなってしまうの? 依存の形成と症状
薬物は1回の使用では依存は形成されませんが、先にお伝えしたような理由で、2回3回と使用が増え、依存が形成されます。
依存が形成されて薬物を常用するようになると、幻覚や思考の分裂、感情が不安定になったり、興奮して暴力的になったりします。
薬物を常用するようになると、効果が切れたときに疲労感や脱力感、恐怖感に襲われ、そこから逃れるためにまた薬物に手を出し、また切れてきたら手を出し・・・という、依存の仕組みができあがります。
どの薬物も気分を高揚させて興奮させる作用がありますが、実際のところ、神経を無理に高ぶらせているだけなので、体はかなり疲弊していきます。
そのため、目つきがギラギラしてテンションが異常に高いのに、体や皮膚がガサガサでやせ細っていることがあります。
薬物を常用している人は、精神的にだけでなく、身体的にもボロボロになっていきます。
依存を引き起こす薬物にはどんなものがあるの?
覚せい剤
白い粉状のものを水に溶いて注射したり、粉を火であぶって吸うなどして摂取します。
神経を興奮させて眠気や疲労感を取り去って、元気が出てやる気がわいてきます。
「元気が出る薬だから」と言われ、ほんの1、2回のつもりが、ついつい疲れた時などに手を出してしまい、依存が形成されます。
効果が切れると激しい脱力感や疲労感などに襲われます。
大麻
大麻草という植物の葉を乾燥させたり、そのまま食べて摂取します。
使用すると、気分が高揚しておしゃべりになります。
常用すると思考が混乱し、感情が不安定になって興奮したり、暴力をふるったりするようになります。
さらに常用すると幻覚や妄想に襲われるようになります。
危険ドラッグ
液体や乾燥させたもの、錠剤などさまざまな形をしています。
覚せい剤や大麻と似たような成分を合成した薬物で、「ハーブ」とも呼ばれています。
店舗やインターネットでも比較的簡単に手に入れられ、若者の間でファッション感覚で流行しています。
しかし、法律で規制されている薬物が入り込んでいることがあり、意識障害や嘔吐、けいれんを引き起こし、最悪の場合、死亡するケースもある危険な薬物です。
コカイン
コカという植物の葉を結晶粉末にし、鼻から吸い込むことで摂取します。
覚せい剤と同様に、体の各機能を覚醒させる効果がありますが、効果が短時間のため、依存すると1日に何度も使用してしまいます。
常用すると、皮膚の下を虫が這いずり回っているような感覚がして、その虫を殺すために自分の体を傷つけることがあります。
有機溶剤
代表的なものはシンナーですが、これらの有機溶剤の臭いをかぐことで、ぼーっとしてアルコールに酔ったような感覚になります。
常用すると、無気力、集中力の低下、幻覚や妄想などの症状が表れます。
さらに、長期の常用によって大脳が委縮してダメージを受けます。
一度ダメージを負った脳は回復することはありませんので、使用をやめても破壊された脳機能による後遺症が残ることになります。
上記5つ、特に依存が強い薬物を取り上げましたが、このほかにも恐ろしい副作用を持つ薬物はたくさんあります。
「一度だけなら」「常用しなければ」と、軽い気持ちで手を出すのは絶対にやめてください。
根気が大事! 薬物依存の治療と後遺症
薬物依存の治療において、まず何よりも大事なことは「薬物をやめる」ことです。
薬物を摂取し続けている限り、依存は続きます。
しかし、依存が強い薬物は、やめたときの薬物からの離脱症状(禁断症状)も強いことから、なかなか自分ではやめることができないことが問題になります。
自分でコントロールすることが難しい場合は、施設に入ったり、入院することで薬物から強制的に隔離して、治療を行います。
薬物の離脱症状として、けいれん、激しい頭痛、不安症、妄想幻覚症状、嘔吐、大量発汗など、大変な症状が次々に現れます。
その苦痛から逃れるため、患者は暴力や嘘をついてでも、何とかして薬を手に入れようとしますが、絶対に渡してはいけません。
薬物から離れるためには、周りにサポートも必ず必要になります。
薬物依存の恐ろしいところは、薬物の使用を完全にやめて何年か経っても、「フラッシュバック」と呼ばれる後遺症が表れるところにあります。
ストレスがたまっていたり、お酒を飲んだりしたとき、薬物を使用していたころのような幻覚や妄想、自分が迫害されているなどの被害妄想が現れます。
そして、その症状から逃れるために、再び薬物に手を出そうとすることがあります。
また、先に有機溶剤について「脳が委縮してダメージが残る」とお伝えしましたが、有機溶剤だけでなく、どの薬物を使用しても脳にはダメージが残ります。
例えば、頭痛薬やかぜ薬などは、決められた使用量を守っていれば依存することもなく体にダメージはありませんが、法律で規制されているような薬物は、使用をやめてからも脳や体にダメージが残り続けます。
記憶力や集中力が低下したり、精神的に不安定になったり、突然暴力的になったりします。
芸能人やアーティストが薬物使用で逮捕され、公前で深く反省し、「もう二度と使用しない」と誓ったのにも関わらず、数か月、数年後にまた使用が発覚して再逮捕されるニュースを見たことがあると思います。
「あれだけ言っておいて、なぜまた使用するの? 」と普通の人なら思うことでしょう。
薬物依存は、自分の意志ではコントロールが難しいことに加え、社会復帰にも時間がかかるため、不安になったり、強い恐怖に襲われたり、自暴自棄になることがあります。
その不安や恐怖から逃れるため、または、フラッシュバックに耐えられないなどの理由で、結果として何度も手を出してしまいます。
特に、覚せい剤は精神依存症状が強いため、何度も手を出してしまうことになるのです。
まとめ
薬物依存から抜け出すためには、薬物をやめて離脱症状と闘うという本人の強い意志と、それを支える周りのサポートが重要になってきます。
薬物に依存していた期間が長ければ長いほど、症状や後遺症は重くなります。
薬物に手を出したくなるほど辛いことや苦しいことがあっても、絶対に手を出してはいけません。
その昔よく聞かれたキャッチフレーズのように「薬物をやめるのか、それとも人間をやめるのか」、そのくらいの選択を迫られるほど、薬物とは人生を狂わせる恐ろしいものです。