人の心理的距離と身体的距離はおおよそ一致していると言われており、好意を持っている、心を許している相手に対しては、近寄りたくなり、逆に、警戒心や敵対意識のある人に対しては、遠ざかりたくなります。
そのため、相手との身体的距離を見れば、言葉を交わさなくとも、自分が相手にどのような関係を望んでいるのか、相手が自分とどのような関係を望んでいるのかを推測できるのです。
言語に頼らないコミュニケーション方法のひとつとして、この心理的距離をマスターしましょう。
パーソナルスペースの分類
パーソナルスペースとは、人間の周囲にある見えない円状の個人的空間、テリトリーであり、この心理的空間をラインとして、異性として意識し始めたり、緊張・不快を感じます。
満員電車は、ストレスで言えば、紛争地域と同レベルと言われます。
圧迫感から来る苦痛に加えて、見知らぬ赤の他人が複数自分のパーソナルスペースに侵入しているということから、精神的に相当負担になります。
このようなパーソナルスペースについて、エドワード・ホール(1966)は、対人距離を下記の4つに分類しました。
- 密接距離(45cm以下)
- 個体距離(45~120cm)
- 社会距離(120~360cm)
- 公衆距離(360cm以上)
密接距離からわかる相手との心理的距離
密接距離(45cm以下)は、恋人同士や親子間で見られるような身体が触れ合うことも可能な距離であり、言葉を使わないコミュニケーションが多くなります。
特に、密接距離の近接相(0~15cm)は視線を合わせたり、匂いや体温を感じられたりすることから、親密な人とのコミュニケーションの距離であると言われます。
個体距離からわかる相手との心理的距離
個体距離(45~120cm)は、親しい友人同士や知人とのやりとりに用いられ、相手の表情を細かく見分けることができます。コミュニケーション手段は主に言葉となりますが、身体の触れ合いによるコミュニケーションも可能です。
個体距離のうち近接相(45~75cm)は、どちらかが手や足を伸ばせば相手の身体に触れたり、抱いたり、つかまえたりできる距離です。その行動範囲がお互いに許される関係と考えて良いでしょう。
個体距離のうち遠方相(75~120cm)は、両方が手を伸ばせば指先が触れ合う距離で、相手の身体をつかまえられる限界の距離です。私的な交渉などで、この距離をとろうとします。お互いの顔の表情が見えるので、言葉がなくてもお互いに顔色を読んで、阿吽の呼吸で気遣うことが無言のうちに期待されています。
社会距離からわかる相手との心理的距離
社会距離(120~360cm)は、仕事上の付き合い等で用いられる距離です。直接に身体を触れ合うことは不可能で、相手と話をするには、ある程度の音量が必要となります。
社会距離のうち近接相(120~210cm)は、相手の身体に触れたりすることや、微妙な表情の変化を見たりすることができない距離です。言葉に残さない阿吽の呼吸の反応よりも、他の同席者にも事態の経緯がわかるように、わかりやすい意味をもった発言が求められることになるでしょう。
社会距離のうち遠方相(210~360cm)は、顔の表情は見えないですけれども、相手の姿全体が見えやすい距離です。相手が突然襲いかかってきても、とっさに反応できる最低限の距離であるとも言われています。
公衆距離からわかる相手との心理的距離
公衆距離(360cm以上)は、講演会における講演者と聴衆との距離のことを言います。話している人と聞いている人との間に個人的な関係は成立しません。
近接相(360~750cm)では、相手の様子がわからず、逆に、自分の行動も相手から目につきにくくなります。お互いにそれほど深く知り合いたい関係が存在していないという言い方もできるでしょう。
遠方相(750cm以上)では、言葉の細かいニュアンスが伝わりにくく、身振りなどを通したコミュニケーションが中心となります。
本人の性格・相手との人間関係・状況が与える影響
パーソナルスペースの目安として、エドワード・ホールの対人距離の分類をお伝えしましたが、実は、パーソナルスペースは、性格で個人差が生まれます。
外交的な人は、パーソナルスペースが狭く、内向的な人はパーソナルスペースが広いです。
また、パーソナルスペースは、相手との人間関係や状況に応じて大きく変化します。
例えば、親しい友人と近い距離で会話すのは平気であっても、見ず知らずの他人が同じ距離に入ってくると不快感をおぼえたりします。
更に、男女間では、パーソナルスペースの形に違いがあり、男性は楕円形で前と後ろに長く横幅が狭い。女性は円形で半径はほぼ一定だと言われます。
そのため、男性は、前方や背後からの急接近に、やや過剰かと思えるような反応を見せることもあるのです。
まとめ
いかがでしょうか?
心理的な距離感に個人差があるがゆえに、相手との距離感が問題となり、ギクシャクとした人間関係を生んでしまうことがあります。
エドワード・ホールの挙げた目安の距離の数字だけを覚えるのではなく、このような距離が設定される理由も覚えるようにしましょう。
そうすれば、相手との距離間を上手にコントロールする事ができるでしょう。
ぜひ、間合いの達人になってください!!