あそこで知り合いたちが楽しそうに談笑しています。
「きっと私の悪口を言ってもりあがっているんだわ…」
そんな風に考えて、悲しくなったり落ち込んだり、あるいは怒ってしまったり…そんな経験はありますか?
もしそうなら、あなたは「被害妄想」があるのかもしれません。
この被害妄想、強く持ってしまうと、とても苦しいです。ひどい閉塞感を感じ、自分がとても不幸で、楽しいことや嬉しいことなどには一生出会えないのではないか? と思ってしまいます。
実は、それはあなただけでなく、あなたを大事に思ってくれる人にとっても辛いことなのです。
さいわい、少し考え方を変えていくことで、この被害妄想を改善していくことができます。
ちょっと試してみませんか? そして、幸せになる方向を探してみませんか?
被害妄想とは何か?
被害妄想とは
「自己と他人との社会的な関係のなかで,他者あるいは知ることのできない力などに迫害され,苦しめられると信じている妄想」(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
のことです。
つまり、実際には「被害を受けていない」のですが、その人の頭の中では「被害を受けている」状態なのです。
ラッセルという哲学者は「幸福論」という本の中で、以下のように記述しています。
「極端な形では、被害妄想は狂気の一種とされている。それは精神病医の扱うべき問題だ。私が考察したいのは、より穏やかな形である。というのも、穏やかな形の被害妄想は、不幸の原因になることが多いからである。」
幸福になることを阻害する原因として「被害妄想」を取り上げています。もしあなたが、幸福でいたいなら、被害妄想を手離す必要があることがわかったでしょう。
なぜ被害妄想を持つのか?
「被害妄想は幸福になることを阻害する」…それなのに被害妄想を起こしてしまうのはなぜなのでしょう?
ゲシュタルト心理学から見ると、「本人にとって何らかのメリットがあるとどこかで思っているから、ある種のマイナス思考を持ち続けている」と考えることもできます。
被害妄想のメリット? 考えられるのは大きく2つあります。
1つ目は「被害者意識」
「私は可哀相な被害者・犠牲者。自分が不幸なのは人のせいで、私のせい。」という考え方です。
2つ目は「関心を引きたいという意識」
「私の話を聞いてほしい。私を見てほしい。私に関心をもってほしい。同情してほしい。注目してほしい。」という意識です。
被害者意識
誰しも、あまりに自分が悲惨な状態に陥ってしまったら、「これは自分のせいじゃない!○○のせいだ!」と責任から逃げたい気持ちに襲われます。
でも、大人であるなら、結局はその状態を受け入れて、周りの助けを借りながらも自分で立て直していくしかないですよね。そして、その「当事者意識」が幸せな気持ちを連れてくるのです。
この「当事者意識」、文字通り「被害者意識」の対極にあるものですね。「被害者意識」=周りや他人のせいで自分が幸せになれない、という考え方は、自分だけを安全地帯に置いておく、幼い考え方と言えるでしょう。
自分を幸せにできるのは、自分なのです。
「私を見て!」
信じられないような通り魔殺人事件。
「誰でも良かった」という犯人の言葉。私たちはその度に戦慄します。この後に「注目されたかった」という自分勝手な言葉が続く時もありますね。
「注目されたい」「話を聴いてほしい」といった気持ちは実は誰にでもある欲求です。この気持ちの大元は「承認してほしいという欲求」です。
「私はここにいるという事を認めてほしい。わかってほしい。」
「あなたはここにいるね。それを私はわかっているよ。あなたはここにいて良いよ。」
言葉にしてしまうと英語直訳文のようになってしまいますが、どうやらこれは人間にはとても大切なことのようなのです。まるで、自分の姿を鏡で確かめるように、他者に承認されて私たちは自分を承認していきます。
承認され、愛されたい。被害妄想の裏側にある欲求はこんな気持ちかもしれません。
ラッセルの公理
先述のラッセルは、「被害妄想は、理解によってのみ治療できるものである」として、以下の4つの公理を提示しています。
- あなたの動機は、必ずしもあなた自身が思っているほど利他的ではないことを忘れてはいけない。
- あなた自身の美点を過大評価してはいけない。
- あなたが自分自身に寄せているほどの大きな興味をほかの人も寄せてくれるものと期待してはならない。
- たいていの人は、あなたを迫害してやろうと特に思うほどあなたのことを考えている、などと想像してはいけない。
では、理解することで、問題を解決していきましょう。
「それは本当のことだろうか?」
被害妄想を抱いているあなた。
まずその「被害」が、本当にあったことなのか?
それとも、本当のことから派生した想像なのか?
を切り分けてみましょう。
あなたを苦しめている対象について「それは本当のことだろうか?」と自問自答してみましょう。
本当のこと=いつ、どこで、だれが、何を、どうした(5WH1)で示せるものです。さらに第三者が理解できる証拠があるかどうか。もし、被害が事実であり、無視できないほど自分を不幸にするものならば、自分を守るための対策を立てましょう。
よくよく切り分けていったら、どうも事実ではないことのようだ、という場合の心の持って行き方が大切です。「被害」は悪い想像らしい。でも、これがあなたの中でどんどん膨らんであなたを苦しめ蝕んでいるのです。
さあ、この頭の中で生まれたモンスターを退治していきましょう!
考え方の癖を改善する①:自問自答
頭の中のモンスターは、あなたの考え方の癖が生んでいるのだと知ってください。ですから、この癖を改善することによって、退治することが可能なのです。
1つ目。先ほど取り上げたように、被害妄想的な考えをしてつらくなったら、「それは本当?絶対そう?」と自問して見ましょう。
「絶対に本当とは言えないなあ」「そうじゃないかも」と思えたら、初回攻撃成功です。
考え方の癖を改善する②:自分に寄り添って優しくする
「こんなはっきりしない嫌なことで、一人で勝手につらくなっているのはバカらしいくない?」
「こんなことを考えるより、もっと自分にとって良いこと、楽しいこと(おいしいもの?)を考えようよ」
など、つらいところから自分が脱出できるように自分に優しい言葉掛けをしてみましょう。
そう、世の中もあなたの頭の中も、実は広いのです。わざわざしんどいところに頑張って居続けなくたって良いのです。
考え方の癖を改善する③:分析してみる
あなた自身を苦しめる考えをちゃんと分析してみましょう。どこまでが客観的な現実で、どこからが想像してしまったものなのでしょうか。
これをしっかり区別して理解をすることがとても大切です。
現実の部分は受け入れようと心がけてみましょう。そして、想像の部分は、なぜそんな想像をしたのだろう? と根拠を探ってみることができると良いでしょう。
「昔、私を馬鹿にしていた人に、あの人何となく似ているかも。だから、私の悪口を言っているんだなんて考えたのかもしれない…」こんな感じです。
考え方の癖を改善する④:「幸せになって良いんだよ」
たとえ、嫌な事があっても「こういうこともあるよね」と考え、嫌な人がいても「こんな人もいるよなあ」と考える。
そんな風に現実を受け入れて、それ以上そのことやその人のことを考えないように心がけましょう。そして、その分の時間とパワーを、あなたがが幸せな気持ちになるために使いましょう。
そう、あなたも「幸せになって良い」のです。
五感を使う感覚を思い出す
人間には、目・耳、口、鼻、手があります。考えばかりにとらわれているのは、これら五感で感じ取る経験が少ないせいかもしれません。
木々の緑や、海や川の水など、自然を感じられるところに自分を置いて、五感を刺激し、感じ取る感覚を思い出してみましょう。そして、「良い気持ち」を満喫してみましょう。良い気持ちは幸せにつながっていきます。
まとめ
いかがでしたか?
被害妄想は、自分の頭の中で、自分を苦しめてしまう毒を作ってしまっている状態です。
なぜそんな癖がついてしまったのか?
理由はいろいろあるでしょう。
でも、今はぜひ理由探しではなく、つらかったあなたを幸せにしてあげて下さい。そのための方法を自分でも探して行って下さい。それが、あなたを大切に思う人をも幸せにする秘訣なのです。