あなたは、周りの人たちから「自我が強い」と言われたことはありませんか?
自我が強いなどと言われてしまうと、一見「わがまま」だと言われているように感じてしまいますよね。
しかし、多くの人が「自我が強い」という言葉の意味を誤解をしてしまっています。
本当の意味では「自我が強い」ということは、必ずしも悪いことではないのです。
しかし、自我の強さもあまにりに度が過ぎてしまうと「独りよがり」で「わがまま」な振る舞いにつながるため、トラブルの原因にもなります。
自分にとって良い出会いがあっても、そうした振る舞いのために、自らそれを台無しにしてしまうこともあるかも知れません。
そこで今回は、自我が強い人の特徴を理解し、自らのわがままな性格を変えるための方法についてお伝えしていきます。
「自我が強い」性格の人の特徴を理解することは、自らの性格を見つめ直すきっかけとなります。
自然に、性格を変えるために何が必要なのかがわかってきますし、周囲との人間関係にも良い影響を及ぼすことになるでしょう。
この機会に、自分の「自我」と向き合ってみてください。
自我って何?
そもそも「自我」って、何なのでしょうか?
自我というのは、英語で表すと「アイデンティティ」のことです。
自分自身に対する意識や観念という意味を表す言葉であり、自分自身の心の中でとても大切なものだと考えられています。
しかし、「自我」という言葉をそう表現されても、今ひとつピンとこないという人も多いのではないでしょうか?
そこで、まず「自我」というものがどのようなものなのかを詳しく見ていきましょう。
自我とは?
心理学の世界において「自我」というものについての概念を定義したのは、ジークムント・フロイトというオーストリアの精神科医です。
彼は「自我」を「意識と前意識、それに無意識的防衛を含む心の構造」と定義しました。
とてもわかりにくいので、わかりやすく言い換えると「行動や意識の主体」となるものだということです。
つまり、自分の心の状態やそれに伴う活動、そして自分以外の他の存在との区別のために必要とされるもの…それが「自我」なのです。
このことを踏まえたうえで「自我が強い」という言葉の意味を考えると、自分自身と自分の外の世界をはっきりと区別する意識が強い状態が「自我が強い」ということになります。
ですから、自我が強いということは必ずしも悪いことではないのです。
自我と自己の違い
また、「自我」に似た言葉で「自己」という言葉があります。
この「自我」と「自己」を同じ意味の言葉として捉える人も少なくありませんが、実は同じものではありません。
英語に訳すると、自我は「アイデンティティ」、そして、自己は「パーソナリティ」となります。
これらは正確には別の意味の言葉で、自我とは「自分が考える自分」、そして、自己とは「自分と他人を通してみる自分」になります。
自我が強い人は、自分に対する意識がとても強く、外からの考えと自分の考えをはっきりと区別する傾向にあります。
しかし、自己を意識している人は自分で考える自分とともに他人からの評価も意識して自分を考えているのです。
そうしたことから考えると、自我を上手にコントロールしているのが自己だと言えるのかも知れませんね。
「自我が強い」と「我が強い」と「気が強い」の違い
こうしたことを踏まえて考えてみると、一般的に「自我が強い」とか「我が強い」、また「気が強い」などという表現は、どれも似ているようで意味が異なることがわかります。
「自我が強い」という言葉は、自分というものを強く意識している状態を表していますが、「我が強い」というのは強情や意地を張るという意味を表しています。
つまり、「我」というのは「自分」という意味なので、この場合の「我が強い」という言葉は「自分の考えを押し通す」という意味を持っています。
また、「気が強い」という言葉と「我が強い」という言葉も、似ているようですが、少し意味が異なります。
「気」という言葉は「気持ちや性格・性質」を表す言葉ですので、気が強いというのは、言い換えれば「性格が強い」と言っていることになります。
このように似ている表現ですが意味が異なるということを覚えておくと、自分が周りから掛けられる言葉の意味を誤解せずに済みます。
自我が強い人の特徴
「自我」というものは「自分自身と自分以外のものを区別する」ための意識のことであり、ただの「わがまま」とは少し意味が違うということは理解できたと思います。
では、その考え方を踏まえたうえで「自我が強い」人を見てみると、共通する特徴を持っていることがわかってきます。
自我が強い人が共通して持つ特徴とは、一体どんなものなのでしょうか?
自我が強い人の特徴
自分の意見を曲げない
自我が強い人というのは、ただのわがままではありませんが「自分の意見」というものをはっきり持っています。
そのため、自分が「正しい」と思っていることは誰が何といっても「正しい」と思っており、その意見を曲げることをしない特徴があります。
自我が強いからこそ、自分の経験や知識に基づいての意見を持ち合わせています。
ですから、他人からその意見が間違っていると言われても、自我が強いため意見を曲げることができないのです。
こうした特徴が強いと、自分自身が周りから孤立してしまったり、トラブルに発展してしまいます。
自分の強みを自慢する
また、自我の強い人は「自分」いわゆる「アイデンティティ」というものをしっかり認識できている人です。
そのため、自分の長所や強みをきちんと理解できています。
そんな自我が強くなると、その強みを周りに対して誇示してしまい、それが周りにとっては自慢だと受け取られてしまいます。
自我をしっかりと確立することは大切な事ですが、それをあまりにも自慢してしまうと、周りにとっては嫌味に聞こえてしまいます。
自分中心に話を進める
自我と自己の違いについては、先程の項目でお話しましたが…
自我が強い人というのは、自分の中で考えた「自分の意思」というものがとても強い傾向にあります。
そのため、とても強く自分の意思を周りに対して出してしまうのです。
自我が強い人は「自分の意見を曲げない」という特徴も持っているので、周りが何か助言をしても、自分の思いが先行してしまい、自分中心に話を進めてしまいます。
説明なく行動に移す
自我が強い人は自分の意思や意識がはっきりしているので、他人から否定されたり、抑圧されることを苦手とします。
そのため、自分が思いついた考えを形にしようとした時、周りに協力を求めることを敬遠する傾向にあります。
なぜなら、協力を求める段階で周りから異論を唱えられるのが嫌だと考えてしまうからです。
そうした理由から、自己判断で行動したり、急に活動を開始したりして、周りから驚かれることも多々あります。
失敗を隠そうとする
このように、自我が強い人は他人から自分を否定されたり、抑圧されることが苦手な特徴を持っているので、万一失敗しても、自らそれを認めることができません。
自我が強い人は、どうしても「自分の意見が正しい」と思う傾向が強いため、否定や抑圧を受ける恐れがある「失敗」に不安を感じてしまうのです。
そのため、失敗してもそれを素直に認められず、隠そうとしたり、周りに対して言い訳をいったり、怒ったりしてしまいます。
自我が強い人にとって、「失敗」は自分の自我を傷つける要因でしかありません。
自我を傷つけられないように守ろうとする防衛機能の影響で、このように失敗を隠そうとしてしまうのです。
感情的になりやすい
自我が強い人は、先程も述べたように失敗などの「自分を傷つけること」に対して、とても敏感な反応をします。
特に、自分が抑圧されて我慢しなくてはならなかったり、自分が失敗をして否定をされてしまうなど、ネガティブな状況に行動を左右されてしまう傾向にあります。
つまり、ネガティブな状況になってしまうと、「自分ばかり我慢している」「自分だけが忙しい」と、自分中心の意見を周囲に対して感情的に言ってしまうのです。
このような感情的な言い方をしてしまうと、周りの反感を買って、トラブルに発展してしまいます。
特定の物や場所に固執する
更に、自我が強い人というのは「自分と他人の境界をはっきり意識している」人なので、自分と他人との境界線をとても気にする傾向にあります。
そうした傾向があるので、特定の物や場所に対してのこだわりがとても強くなります。
自分のお気に入りの場所や気に入っているものに対して固執したり、執着することが多く、そこに他人が関わることをとても嫌がります。
自分の自宅にある自分の部屋がお気に入りの場所という人は良いですが、例えば、会社などに自分のお気に入りの場所がある人は、そこに他人が入ってくると、トラブルを起こしてしまうことがあります。
特定の物についても、自分が決めた置き場所から他人が動かした、などということでトラブルを起こしてしまいます。
このような特徴を人前で出してしまうと、社会では「付き合いにくい人」というレッテルを貼られてしまうので要注意です。
特に女性で自我が強い人に見られる特徴
男女を比較してみると、実は女性の方が「自我」がしっかりしている傾向にあり、脳の仕組みからも女性の方が感情的で自我が強くなりやすいと言われています。
人間の脳は右脳と左脳にわかれていますが、その両方の脳を繋ぐ「橋(きょう)」という部分が女性の方が少し太いため、女性の方が感情的になりやすいそうです。
だから、女性で自我が強い人は男性以上に感情的な振る舞いをしてしまうのですね。
ところで、これまで述べてきた自我が強い人の特徴に加えて、下記のような特徴を持つ女性を、男性は「自我が強い」「扱いにくい」として敬遠してしまうようです。
- 意地を張る
- 声が大きく自己主張が強い
- 相手の話を聞かない
- 相手への思いやりがない
- おせっかいや余計なアドバイスをする
- 自分が中心に扱われないと不機嫌になる
- 「でも」「だって」が多い
- 気分にムラがある
このような特徴は、多くの周りの人たちの目には短所として映ります。
正直、女性であっても、男性であったも、こうした特徴を持つ人は敬遠されますよね?
もし、あなたが今「自我が強い」性格を短所や欠点として捉えているのなら、この自我をコントロールしていく必要があるのかも知れませんね。
自我の強さから見えるもの
ここまでは、どちらかと言えば「自我が強い」ことは短所や欠点であるという視点から情報をお伝えしてきました。
しかし、冒頭でもお伝えしているように「自我が強い」ということは必ずしも悪いことではありません。
自我が強いということは「自分の意思・意見」が強いということです。
ですから、自我が強い人ほど強い精神力を持っている、と言い換えることもできます。
ここからは、ここまでお伝えしてきた「自我の強さ」を作っている心理的な要素についてお伝えします。
自我の強さを構成している心理
自我心理学派を創始したジークムンク・フロイトの精神分析の中では、「自我の強さ」は以下の5つで構成されていると言っています。
主体性と自律性
自我には「主体性」と「自律性」があります。
主体性とは、自分の行動や言動の主体は自分の心にあるということ、つまり、自分が今、何をしたいかの判断基準がいつも同じように自分の心の中にあるということです。
また、自律性とは、いつも同じ判断をするための心の習性のことです。
心の中で「やりたいことがある」と思った時に、いつも同じ判断基準に基づいて考える、というところが自我の大きな特徴だと言えます。
この心理が強い人ほど、自我が強い人なのです。
自我の防衛機能
心理学における防衛機能とは、自分の心を不快な感情・気持ち・体験などから守り、心理的に安定した状態に保つための心の働きのことです。
自我にはこの防衛機能が備わっており、状況に応じて様々な形で働き心を守っています。
例えば、自分が不快な体験をした時に、それを思い出さないように忘れてしまう、という働きは、自我防衛機能の中の「抑圧」の働きによるものです。
この他にも、不安から逃げようとする「逃避」や、コンプレックスを別の方法で補おうとする「補償」などがあります。
自我が強い人はこの防衛機能も強く働くため、場合によってはトラブルの原因になってしまうこともあります。
しかし一方で、自我防衛機能は自分が困った時に自分の心を守ってくれる大切な力でもあるのです。
衝動統制
自我における衝動統制とは、不快なことなど自我を脅かすようなことがあっても我慢ができることです。
衝動とは、目の前にあるささいな欲求や快感を満たしたいと思う心理のことで、自我が強い人はこの衝動を自らコントロールする力に長けていると言われています。
一方、この衝動統制が欠如してしまうと、日常生活に支障をきたしてしまうので、そうした状態にある場合には病気としてきちんと治療する必要があります。
欲求不満耐性
欲求不満とは、何らかの理由で欲求が満たされない時に起きる心理的な緊張状態を指す言葉です。
人間はこの欲求不満を解消するために、様々な欲求不満反応を示します。
例えば、欲求不満から逃れるために現実逃避をする「逃避反応」や、他人に対して攻撃的・破壊的な言動や行動を取る「攻撃的反応」がそれです。
しかし、自我の中には「欲求不満耐性」という欲求不満という状況に、ある程度、耐えられる心理を持っています。
自我が強い人というのは、こうした欲求不満耐性も強いため、他の人よりも欲求不満に対して我慢ができると言われています。
現実検討能力
現実検討能力とは、自分の心の中の考えが現実の世界と一致しているか照合する力のことを指す心理学用語です。
この力は自我に備わっており、客観的に自分の考えを捉えて、その分析ができる能力だと考えられています。
自我が強い人はきちんと理性が働き、自分を客観視する能力が高いと言われています。
自我が強いと依存心も強い?
一般的に自我が強い人というのは自分の意見や意思を強く持っているので、それが強過ぎると、プライドが高く、自己主張が強い人だと思われがちです。
しかし、そのように自我を強く出してしまう要因が不安や恐れである場合、その自我の強さは依存心の強さの裏返しである場合もあります。
先程の項目で「自我の強さを構成している心理」についてお伝えしましたが、その中に自我の防衛機能という心理がありました。
人間というのは、不安や恐れを感じると心理的に不安定な状態になってしまうため、できるだけ心理的に安定した状態を保つため、様々な心理的作用を起こします。
その中にある「補償」や「逃避」、そして「退行」などの心理作用は、依存心につながるものです。
例えば、不安を感じた時にその場面から逃げる「逃避」という心理作用は、誰かに頼ることで逃避する「依存心」と考えることもできます。
自我が強い人は自己主張が強いので、気がつくと周囲から離れて孤独になってしまうことが多々あります。
自分が孤独だと気がついた時、大抵の人間はその状況に不安を感じてしまうでしょう。
すると、その状況から「逃避」するために、だれか頼れる部下を探したり、何とかして責任を逃れる方法を考えてしまいます。
それがいわゆる「依存心」であり、自我が強いと、こうした不安を隠したり、解消したりすりために、依存心も強くなってしまいます。
自我が強い人はめんどくさい人?
また、これも一般的な意見ですが、自我が強い人は「扱いにくい」いわゆる「めんどくさい人」と思われています。
ですが、本当にそう言えるのでしょうか?
自我が強い人は自分の意見や意思をしっかりと持ち、自分と他人との境界をきちんと区別できる人です。
こうした部分が強いと、周囲と自分をしっかりと区別して意見を述べる、素晴らしいリーダーになれる人だと言えるのではないでしょうか?
しかし、あまりにも自分の意見を強く出してしまうと「扱いにくくめんどくさい」と思われても仕方ありません。
こうした人は、どちらかと言えば「自我が強い」というよりも「我が強い」、いわゆる「わがまま」な人になるでしょう。
自我が強いことは決して悪いことではないのですが、あまりにも強過ぎてしまうと、せっかくの意思の強さが「わがまま」だと周囲に認識されてしまうのでもったいないです。
自我の強さは、自分が周りからめんどくさいと言われない程度に出すようにした方が賢明です。
自我は強めるべき? 弱めるべき?
ここまでは「自我が強い」ということはどういうことなのかを様々な側面から考えてきました。
そこで一つ疑問となるのは「じゃあ、実際に自我は強めるべきなの? それとも弱めるべきなの?」ということです。
自我が強過ぎると「わがまま」だと誤解されてしまうし、反対に弱すぎても意思が弱い人間だと思われてしまいます。
一体、どの程度の自我が周囲との人間関係にとって良いのでしょうか?
自然自我とは
人間がこの世に生を受けてすぐの赤ちゃんの頃に持っている自我を「自然自我」と呼びます。
多くの人は、大人になると赤ちゃんの頃の記憶を覚えていません。
しかし、記憶というのは「覚えていない」「忘れた」のではなく、ただ「思い出せない」だけで、脳内にはしっかり記憶が刻まれています。
この「思い出せない記憶」が潜在意識、いわゆる無意識と呼ばれるものです。
自然自我も、この無意識のうちに人間が持っている自我になります。
生まれてきた瞬間から持っている自然自我のわかりやすい例としては、赤ちゃんが自らを守るために泣いたりする「意思表示」のことだと考えると良いでしょう。
こうして生まれながらに持っている原初的な観念イメージが自我であり、外界の現実と自然自我である心理のイメージをすり合わせながら自我を成長させていきます。
社会的自我とは
先程お伝えした自然自我が発達の過程で成長して変容していくと「社会的自我」となります。
社会的自我は、発達していくことによって起こる自我の成長・変化と、外界からの刺激によって生まれる「内外差異」で生じる葛藤によって生まれます。
例えば、赤ちゃんの頃の自我の意思表示は「泣く」ことだけでしたが、発達の過程で「泣く」と周囲がどんな反応をするのか、またどんなことが起こるのかということを経験します。
この経験が外界からの刺激となり、成長の過程で自然自我を社会的自我に変容させていきます。
人間は他の動物と違い、この社会的自我がなくては満足に生きてくことができない生物です。
人間一人一人が「自我」という自分の意思を持っている中で、複雑な社会環境で生きていくには「社会的自我」を発達させなくてはなりません。
自我は強めるべき?弱めるべき?
つまり、ここまでの内容を踏まえると…
今私たち人間が持っている自我というものは、自然自我を基礎とした社会的自我であり、複雑な社会で生きていくためにはこの両方の自我をうまく調和させていく必要があるということになります。
そのため、自我が強過ぎても周囲との軋轢を生んでしまうし、自我が弱すぎても社会から淘汰されてしまいます。
自然自我は私たち人間が生まれた時から持っている気質で、社会的自我は社会の中での役割や性格です。
ですから、この両方を状況に応じて強めたり弱めたりして、バランスを取りながら生活していくのが一番良いと考えられます。
もし、あなたが周りから「自我が強くて扱いにくい」と言われた時には、この両方の自我のバランスを考えてみて、調整し直してみるのが良いのではないでしょうか?
自我の強さは、強めるべきでも弱めるべきでもなく、バランスを考えるべきなのです。
自我が強い自分を変える方法
自我というのは「自分の意思」を表すものですから、あまり強過ぎても弱すぎても良くありません。
自我が強い人は、ポジティブに考えれば意思が強くリーダーシップを発揮する人になり得ますが、あまりに強過ぎると扱いにくく「わがまま」だと誤解されてしまいます。
ですから、自我が強いという自覚がある人は、その自我の強さをバランスよく変えていく必要があります。
では、どうすれば自我が強い自分を変えることができるのでしょうか?
わがままな自我を「抑える」?
よく周りから「自我が強くてわがまま」だと言われてしまう人は、そうした自分の自我を抑えようと努力します。
もともと、自我が強い人は自我の防衛機能も強いので、つい強く出てしまう自分の意見や意思を抑え込むことは難しくありません。
これは、防衛機能の中の「抑圧」という心理作用によるもので、自分が周囲から「わがまま」を指摘されないように自分の気持ちを無意識の中に押し込み、無かったことにしてしまいます。
しかし、このようにいつも自分の自我を抑えてしまうと、いつか心に限界がきます。
防衛機能というのは、あまりにも頻繁に用いてしまうと、精神的な病気の症状として表面化してしまいます。
例えば、いつも自分の気持ちを言えずに抑圧してきた人が、何かの拍子に過呼吸を起こしてしまったり、急に我慢の限界がきて攻撃的になってしまう、などです。
こうしたことは抑圧が限界にきたことが原因で起こっていると考えて良いでしょう。
ですから、わがままだと思っている自分の自我をただ「抑える」のではなく、そうした気持ちに対しての考え方を「変える」必要があるのです。
自我が強い自分を「変える」方法
ではここで、具体的にどういう方法を行えば自我が強い自分を「変える」ことができるのかをお伝えします。
何か意見を言う前には必ず一呼吸置く
自我が強い人は自分の意見をはっきりと持っているので、周りと意見が合わない時には、つい反論してしまいたくなります。
自分の意見ばかり押し付けてしまうと相手とトラブルになってしまうので、何か意見を言う前には必ず一呼吸置く習慣をつけるようにしましょう。
「怒り」や「イライラ」といった自分の感情をコントロールするための手法として、「アンガーマネジメント」というものがあります。
そのアンガーマネジメントの中の怒りを抑えるためのひとつの手段として「6秒数える」という方法があるのです。
6秒待つことで、自分の中で考える時間を作り、それを心の余裕にしていく。
そうすることで、自我が強くて周りとトラブルになった、などという事態を回避することができます。
失敗を認める
失敗しても何も恥ずかしいことはないのですが、自我が強い人は自分の意見がしっかりしていて、それを曲げることが苦手なので、周りから失敗を指摘されても認めることができません。
ですから、失敗を指摘されたり、自ら失敗に気づいた時にはそのことを認める気持ちを持つよう心がけましょう。
そうして失敗を認められたら、素直に謝ることも大切です。
自我が強くて自分を曲げられないと、失敗をごまかしたり、隠したりして、更なるトラブルの原因を作ってしまいます。
失敗を認めることができるようになれば、自我が強くても、周りとトラブルを起こさずに良好な人間関係を作ることができます。
素直で正直に生きる
失敗したら素直に認めることは本当に大切ですが、それ以上に褒められたら素直に喜ぶことが大切です。
自我が強い人は、自分と他人の境界をはっきりと区別しています。
それはつまり、公の部分で見せる自分とプライベートの部分で見せる自分をしっかり分けているということ。
このような人は、会社などで決してふざけたりしませんし、冗談が通じない場合も多いです。
ですから、自我が強い人ほど素直な反応をするということを心掛けておく必要があります。
また「失敗を認める」という項目にも書きましたが、失敗した時に嘘をつくなどしてごまかすのは良くありません。
正直に失敗を認めて謝罪するということをすれば、周りとトラブルになることもないでしょう。
自我が強い人ほど「素直で正直に生きる」ということを意識しておきましょう。
人に頼る
失敗した時もそうですが、人から何か頼まれた時など、自我が強い人ほど精一杯物事に取り組みます。
そして、自我が強い人には自尊心が強い人も多いので、できない時に人に頼ることができません。
そうすると、いざ失敗してしまった時に大きなトラブルに発展してしまうことがあります。
ですから、できないことはできないと謙虚な気持ちで言えることが大切になってきます。
できないのにできるふりをしてしまったりせず、できない時には「できない」と人に頼ることを練習していきましょう。
プレゼンテーション能力を身につける
失敗を認めるということを苦手としている自我が強い人におすすめの方法です。
それは、「プレゼンテーション能力」を身につけるというもの。
この能力を身につけておけば、自分の考えをスムーズに受け入れてもらうことができるからです。
そもそも、自我が強い人は自分の意思をしっかりと持っているので、企画力に長けている場合が多いです。
自分の考えを押し付けるのではなく、相手を納得させることができれば、自分の意見を曲げて心を痛めることもなくなるでしょう。
自分の自我を守るためにも、ぜひ身につけてほしい能力です。
言葉で言えない時は態度で示す
自我が強い人は自分の考えを曲げることや失敗を認めることが苦手なので、何かトラブルがあっても謝ることができません。
頭を下げたり、謝罪の言葉を口にすることは「負け」を認めることと同じと思っているので、どうしてもできないのです。
そんな時には、直接言葉で謝罪するのではなく、文字や態度で謝罪の気持ちを伝えるようにしていきましょう。
メモなどで「ごめんなさい」と書いて渡したり、相手が怒ってしまった原因と同じことをしないようにするなど、相手にわかるように行動で謝罪の気持ちを伝えましょう。
そうすることで、相手にあなたのことをより理解してもらうことができます。
「でも」「だって」と言わない
人に何か意見を伝える時や、人から何か意見を言われた時には、決して「でも」や「だって」と言った否定の言葉を使わないようにしましょう。
自我が強い人は、自我の防衛機能の一つである「否認」の心理作用も強く出てしまいがちです。
しかし、こうした否定を受ける相手の気持ちになって考えてみると、決して気持ちの良いことではありません。
自我が強いあなたが、もし相手から「でも」とか「だって」と言われたら、不快感からイライラしてしまい、絶対にトラブルに発展してしまうのではないでしょうか。
相手に不快感を与えないようにするためには、まず人の話を最後まで聞いてあげましょう。
人の話を聞く(傾聴)
自我が強い人に限らず、対人コミュニケーションを良好にするカウンセリングの技法に「傾聴・共感・受容」という考え方があります。
この3つをしっかりと心に留めて人と関わることで、自我が強い人でも周りとトラブルにならず、上手に付き合っていけるようになります。
ですので、この機会にぜひ覚えておいてください。
まず一つ目が「傾聴」です。
とにかく、自分の話ばかりせずに人の話に耳を傾けることを心掛けてください。
自我が強い人は、どうしても自分の意見を先に述べてしまいがちです。
あまりに自己主張が強いと周りから嫌われてしまうこともあるので、人の話をまずは聞いてみるという姿勢を忘れずにいてくださいね。
相手にも思いがあると考える(共感)
二つ目は「共感」です。
共感とは、傾聴により人の話に耳を傾けたら相手の気持ちにできるだけ寄り添っていくということです。
自我が強い人は自分の意思がしっかりしているので、他人と話していても自分の意見を大切にする傾向があります。
もちろん、そうした傾向は決して悪いことではありません。
しかし、ただ自分の意見ばかりを大切にしていては、周りとトラブルになってしまいます。
自分と同じように相手にも大切にしたい「思い」があるんだと考え、相手の気持ちに共感することで、人間関係を良好に保つことができます。
相手の意見を受け止める(受容)
相手の気持ちに少しでも寄り添い「共感」をすることができたら、次はその気持ちを受け止める努力をしていきましょう。
心理カウンセリングの技法の中で一番大切だと言われているのが、この「受容」です。
自我が強い人というのは自分の意思がはっきりしているので、物事を「白黒」や「善悪」といった二者択一で考えがちです。
しかし、世の中にはそれ以外の選択肢もあります。
それが、この「相手の意見を受け止める」というものです。
受け止めるということは、相手の意見を自分の意見として「受け入れる」のとは意味が違います。
受け入れるということは、状況によっては自我の強い人が苦手な「自分の考えを曲げる」ということにもなりますが、受け止めるのであれば自分の意見と相手の意見がどう違うのかを確認することができます。
きちんと受け止めれば、その意見が自分にとって受け入れるべきものなのかを考えることもできるでしょう。
そうしたことからも、相手の意見を受け止めるというのはとても大切なことなのです。
前向きが大切
このように見ていくと、自我が強い人というのは自分の意見を中心に考えてしまうので、自分自身がポジティブな時は良いのですが、ネガティブになってくるとどんどん悪い方向に物事を考えてしまう傾向にあります。
そして、自我が強いので、自分自身ではその方向を修正することができませんし、周りの意見を取り入れることも難しいでしょう。
そうならないためには、やはりいつでも前向きな気持ちで生活しておくことが大切です。
前向きな気持ちでいるためには、過去の失敗やネガティブな気持ちに入り込んでしまわないように、気持ちを切り替える方法を身につけておく必要があります。
例えば、就寝する前にその日のことを振り返っていくと思います。
そんな時にネガティブな感情で締めくくって眠りについてしまうと、その感情をいつまでも引きずってしまいます。
ですから、ネガティブな出来事があったとしても、締めくくりには必ず「感謝」と「謝罪」をしてから眠りにつくようにしてください。
そうした毎日の積み重ねが、前向きな気持ちを作っていってくれます。
自我を超える超自我
ここまでで、「自我が強い」ということは、必ずしも悪いことではないのですが、良好な人間関係を構築するためには自我をきちんとコントロールしなくてはならないことがわかったと思いますが、自我をコントロールするために欠かせないものとして「超自我」と呼ばれるものがあります。
自我心理学派の創始者であるジークムンク・フロイトは、超自我が自我と「エス」と呼ばれる無意識の領域にルールや倫理観・良心・理想などを伝える機能を持っていると定義しました。
つまり、超自我の存在は自我を凌駕するものであり、超自我を意識することで自我の強さをコントロールすることができるというのです。
最後に、この超自我についてご紹介します。
超自我とは?
先程も少し述べましたが、超自我とは自我と「エス」と呼ばれる無意識をまたいだ構造であり、ルールや道徳観・倫理観・良心・禁止・理想などを自我とエスに伝える役割を持っています。
もう少し厳密に言えば、超自我は無意識と意識の両方に現れて、意識される時もあれば、されない時もあるというグレーな存在です。
そんな超自我は、自我の防衛機能を起こす原因とされており、そうしたことから超自我が自我をコントロールする存在だと考えられています。
しかし、超自我には完璧を目指す傾向もあるので、自我が強い人は超自我も強くなってしまうと言われています。
そのため、超自我も自我としっかりバランスを取っていかないといけません。
超自我を持つ人の強さ
超自我を持ち、それをきちんと意識して生活している人は精神的にとても強い人と言われています。
超自我を持つ人は、自分の自我に負けて何か問題のある行動や言動を取ってしまっても、それを自ら修正することができます。
超自我の中にあるルールや倫理観といったものは、いわば人間の「行動原理」と呼べるものです。
この行動原理がしっかりしていれば、自我が強過ぎて自分が他人とトラブルになりかけたとしても、行動原理に基づいてそれを修正することができます。
大切なのは、その行動原理が自我の「わがまま」な部分に影響されないようにしておく意識を持つことです。
超自我を意識していく人生は、自我が強くてもそれに振り回されることのない豊かな人生を送ることと同じなのです。
まとめ
「自我が強い」ことは、「欠点」や「短所」ではなく、意思が強く「自分の意見」がはっきりしていることです。
それは、いわばあなた自身の「個性」に他なりません。
そうした個性をただ抑えてしまうのは、最善の選択ではありません。
個性を大切にしつつ、周囲の人たちを思いやりながら、それでも自分の気持ちを伝えることを諦めずに行っていく時、そこには必ず良好な人間関係が生まれます。
まずは、あなた自身が「自我が強い」という個性を受け入れましょう。
そうすればきっと、あなたは周りから指摘されるような「わがまま」な自分を変えることができるはずです。