「うつ病」という言葉は、今時さほど珍しい言葉ではありません。
でも、どこか他人事だと思っていませんか?
よく聞くけど、自分には関係ない、そんな風に思っていませんか?
あるいは、「治る病気なんでしょ?」と軽く考えていませんか?
いいえ、そんなに簡単な病気ではありません。
「うつ病」の治療と職場への復帰は、長く困難な道のりです。自覚が遅くなればなるほど、より深刻に、ときに命にかかわることもあるのです。
では、できるだけ早く「うつ病」に気づくためには、自分のこころとからだのどこに注目したら良いのでしょうか?
簡単に自己診断ができたら、それに越したことはありません。
今回は、うつ病かどうか診断するための代表的な質問を7つお伝えします。
腹が立つことが多いが、普段は抑えていませんか?
この質問は、自分の感情を「抑圧」しすぎていないかを診断するものです。
日本の社会では、公共の場で怒りをあらわにすることを良しとはしていません。そこで、社会人はみだりに公共の場で怒ったりしません。
これを心理学で「適応行動」といいます。
そして、人前で怒らないために、怒りの感情そのものを押さえつけようとする人もいます。
これを感情の「抑圧」と言います。
怒りの感情を押さえつければ、怒る行動につながらないので、一見、合理的に見えます。
しかし、感情とは「喜怒哀楽」のワンセットでできています。
「怒」の感情を抑圧してしまうと、同時に「喜」「哀」「楽」の感情もエネルギーを失っていき、意欲の全体的な低下につながります。
「怒」の感情だけを抑え込む、そんな都合のいいことはできないのです。
他人の仕事のミスを責められない、意見の主張ができないでいませんか?
この質問は、自己主張がスムーズにできているかを診断するものになります。
心理学では、うつ病は「攻撃性の病」と言われています。
攻撃性を自分の外に向けて発散させると、攻撃行動になりますが、自分に向けてしまうとうつ症状になってしまうのです。
もちろん攻撃性といっても、この場合は「積極的」「アグレッシブ」など攻撃性のプラス面のことを言います。
例えば、他者がとるべき責任はきちんととらせたり、必要な時に意見を主張する、といったことが、攻撃性のプラス面です。
こういったことまで抑え込み
「誰か一人の責任にするのはよそう」
「自分の意見より、他人の意見を尊重しよう」
ということが、積み重なると、行き場をなくした攻撃性は自分に向かうのです。
仕事スイッチが入りやすいですか?
朝起きると頭痛がする、しかし、スーツを着て出勤すると頭痛が治る……
仕事スイッチで多少の体調不良は乗り越えられる、というのは一見便利で、デキる男というふうにも見えます。
しかし、これほどわかりやすく仕事スイッチが入る方は、うつリスクが大変に高いと診断できます。
頭痛は当然のことながら、体や脳の疲れのサインです。
しかし、それが治まるということは、過剰な脳内伝達物質が出ているということです。
つまり、脳や体の限界を超えて酷使できる、ということになります。
「限界を超える」というのは、なんだか響きはカッコいいですが、自覚できないダメージを脳にためていくことになります。脳が疲れると、意欲が低下し、うつ症状につながります。
うつ病の中でも、『双極Ⅱ型』という診断を受ける方に、多い症状です。
休日は昼も夜もよく眠りますか?
これは一見いいことのように見えます。休日なのだから寝だめをして、勤務に備えよう、と昼寝をする方もいるでしょう。
しかし、人間は、寝だめはできないのです。
この質問は、脳の覚醒・沈静リズムがスムーズに機能しているかを診断する項目になります。
昼夜構わず眠っていると、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、脳はいつ活動すべきなのかわからなくなってしまいます。「昼寝しすぎると頭が痛くなる」という方は、この予兆が表れているのです。
脳が、いつ活動すべきで、いつ休むべきか見失った状態を、精神医学で「過覚醒」・「過沈静」といいます。
急にハイになる、急に意欲をなくす……
それは、躁うつ病やうつ病へつながっていくのです。
肩こりや頭痛が取れないですか?
こちらは「仮面うつ病」の可能性を探る診断項目になります。
「仮面うつ病」とは何でしょう?
「仮面うつ病」は、やる気のなさやうつ気分など、心に出る症状ではなく、肩こりや頭痛・めまいなど、体に症状が出るのが特徴です。
うつは心の病気なのに、なぜ肩こり? とお思いの方もいるでしょう。
体に症状が出るかたは、心に症状が「出せない」ことが多いのです。
自分の気持ちの変化に気づきにくい人や、不平不満を、無意識のうちに心の奥底に封印してしまう人に、このような症状が出がちであるといわれています。
外科的に異常がないのなら、周りの人々に相談してみると、自分のストレス因が分かるかもしれません。
話す内容と表情が一致しないことがありませんか?
この質問は、「解離」状態の有無を診断する項目です。
「解離」とは何でしょう?
具体的な例でいいますと、
「俺、全然仕事で休みが取れなくってさ、寝れてもなくってさ、俺もう限界だよな。ハハッ。」
と、なかなかに深刻な内容を、笑いながら話している様子をいいます。
一見すると、つらいことを笑い飛ばしている、という風に見えなくもありませんが、笑いながらも無表情であったり、全く話題と会わないタイミングで微笑んだりと、他者から見ると違和感を感じ、指摘されることが多い症状態です。
これを心理学で「解離」と言います。
心がこれ以上ダメージを受けないよう、行動(表情含む)と心の動きが離れ始めている状態です。
スマホゲームが義務的になり始めていませんか?
これは、うつ病の代表的な症状である、「意欲の低下」が、深刻化している可能性を診断する質問です。
なぜ、スマホゲームなのでしょう?
- 第一に、スマホは常に身近にあることが特徴です。ですから、何も用事がなくても、習慣的に触ってしまいます。
- 第二に、スマホのゲームは、毎日ログインすることで、何らかの特典があるものがほとんどです。「連続ログインすることで、さらに豪華な特典」といった文句は、バナー広告でよく見られます。
しかし、意欲が低下してくると、スマホのゲームをすることすらつらくなります。
ですが、常に身近にあるので、ついゲームをしてしまいます。
まるで仕事のように、「イヤなのにゲームをしている」状態になったら、うつによる意欲の低下の可能性が高いです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
一見うつにはかかわりなさそうなことも、視点を変えれば新たな発見があります。
また、上記でもお伝えしましたが、うつ病の発見は、自分だけでなく、他者の視点も大切なのです。
より正確な診断のためには、周りの方の意見を聞いてみることが効果的です。
あなたと、あなたを見つめていてくれる人たちのために、どうか、ご自分のこころとからだ、大切にしてください。