生活していく中で、私たちはさまざまなストレスを受けて過ごしています。
職場やプライベートでの人間関係、転勤や進学などによる環境の変化など、ストレスを感じる場面や感じ方は人それぞれです。
しかし、上手に発散したり、ストレス環境に適応していくことで、人は成長する生き物です。
ただ、そのストレス環境に適応しきれず、そのストレスが症状となって、精神や身体に影響を及ぼす「適応障害」という病気があります。
近年、皇族の方や芸人まで、多くの人を悩ませるこの適応障害とは、いったいどのような病気なのでしょうか?
今回はこの適応障害の症状と治療法、さらに適応障害を予防する方法についてお伝えします。
適応障害とは?
適応障害とは、特定のストレス要因によって引き起こされる障害で、その精神的または身体的症状により社会的機能が障害される状態のことを言います。
症状の原因となるストレス要因がはっきりとしているため、そのストレス要因を除去したり、回避したりすることで症状が改善します。
例えば、職場に対して耐え難いストレスを感じている人が、仕事中は頭痛や腹痛に悩まされるのに、休日になるとその症状が嘘のように軽くなる、というような状態のことです。
一般的には、環境に慣れることでストレス要因だったものが解消され、症状が自然と消えることがほとんどです。
しかし、人によってストレスに対する受け止め方はさまざまで、そのストレス要因を「耐え難い」「苦痛だ」と強く認識してしまうと、ストレスはいつまでも消えず、どんどん強くなっていきます。
そして、その強いストレスを受け続けることで症状が慢性化してしまい、しまいにはストレス要因から離れても、症状が改善しなくなってしまうことがあります。
適応障害の症状とは?
適応障害の症状として目立つものには、3つのタイプがあります。
- 精神的な症状・・・不安障害、神経過敏、心配性、イライラなど
- 行動的な症状・・・無断欠勤、学校をズル休みする、他人との衝突が増える、社会的なルールを守らないなど
- 身体的な症状・・・頭痛、腰痛、腰痛、全身の疲労感、睡眠障害など
特定のストレスを受け始めて3か月以内にこれらの症状が出はじめ、そのストレスを除去または回避したあと、6か月以内に症状が改善すれば、その症状は適応障害からきているということになります。
これらの症状のほかにも、出社拒否や登校拒否、あるいは完全に引きこもりになってしまったり、3つのタイプが混合する混合型の症状が出ることもあります。
悪化すると、「うつ病」にもなりかねない、怖い病気です。
思い当たったらチェックしてみよう! 適応障害診断
以下の10項目は、適応障害の症状です。
「もしかしたら私は適応障害かも知れない」と不安に思うようであれば、一度、チェックしてみましょう。
- 3か月以内に、転勤や進学、結婚などで生活環境に変化があった。
- 会社や学校に行くことを考えると頭痛や腹痛がするが、休日には改善する。
- 症状が出ていることを辛いと感じて、ふさぎこんでしまうことがよくある。
- ちょっとしたことでイライラしたり、怒りっぽくなってしまう。
- 常に疲れを感じて、体がだるい。
- 友人との約束をすっぽかしたり、無断欠勤することがある。
- 自分にとってストレスだなと思う場所に行かなければ、全体的に調子がいい。
- ささいなことに落ち込んで抑うつ気分になったり、すぐ泣いてしまうことがある。
- 大した問題でもないのに心配で眠れなくなる。
- 症状が出ているせいで日常生活に支障をきたしていると感じる。
当てはまる症状はありましたか?
しかし、これはあくまで簡易的な診断になります。
多くの症状に心当たりがある場合は、専門科を受診して適切な治療を受けてください。
適応障害は予防できる?
新しい環境や不慣れな環境というものは、自分では平気だと思っていても、思っているより心と体に負担がかかるものです。
環境に適応できないことを「甘えだ」「慣れればなんとかなる」などと考えず、体調に異変を感じたら、「適宜休養を取る」ことが適応障害の予防法です。
ストレスの感じ方や耐性は人それぞれ違うので、他の人にとってはなんでもないことでも、本人にとっては耐えがたいほど辛く大変なものだったりします。
新しい環境にストレスを感じて体調や精神的に異変を感じるときには、ストレスをため込まずに上手に発散させるようにしたり、いつもよりも多く休養をとることを心がけましょう。
自分でストレスをコントロールできない場合は、家族や友人に話を聞いてもらったり、カウンセリングを受けたり、専門科を受診しましょう。
適応障害の治療法とは?
適応障害の治療法は、2つあります。
1.ストレス要因の除去または回避
適応障害の原因となっているストレス要因を取り除くことで、半年以内に症状が改善します。
しかし、例えば、そのストレス要因が会社や学校にある場合、やめることはなかなかできません。
その場合、休職や休学をして体調がある程度回復するのを待つことも考えましょう。
会社においては、従業員のメンタルヘルス管理に力を入れているところも多くなってきています。
専門部署に相談して、休職や自分が適応できる場所への異動を相談してみるのもいいでしょう。
2.カウンセリング
人間関係や仕事の内容が自分には合わない、勉強についていけないなど、さまざまな原因からその環境に適応できなくなり、それらがストレスとなって体調不良や精神的不安定などの症状が表れると、「会社に行くと頭が痛くなる」「学校に行くと腹痛やめまいがする」と、間違った情報を脳にインプットしてしまいます。
そして、その間違った情報により、症状が引き起こされるようになってしまいます。
この間違った情報から解放されるためには、「会社に行っても頭は痛くならない」「学校に行っても腹痛やめまいは起こらない」という正しい情報を、専門科によるカウンセリングにより、インプットする必要があります。
そして、どうして自分はその場所にストレスを感じているのか、ストレス要因について追及し、そのストレス要因とどう向き合っていくかを考えます。そうやって、その環境に対する自分の適応力を高めていきます。
適応障害によって、頭痛や腹痛、不眠、不安障害などの症状が強い場合は、症状に合わせて薬が処方される場合もあります。
しかし、それはあくまで症状を和らげるためのものであり、根本的な適応障害の治療にはなりません。
ただ、胃潰瘍、過敏性腸症候群、狭窄症、月経不順、高血圧などの身体的な症状が重い場合には、適応障害ではなく、ストレスが原因で起こる「心身症」の場合もあります。
この場合は、適応障害の治療よりも現れる症状の治療が優先になるため、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
適応障害は、誰にでも起こりうる身近な病気です。
ストレスというものは、自分が実感している以上に、見えない心に負担をかけるものです。
また、転勤や進学などの明らかな環境の変化だけでなく、結婚、ペットの死、恋人ができる、新しい人間関係に加わったときなど、身の周りの出来事や人間関係によっても適応障害は引き起こされることがあります。
特に、普段から何事にもがんばりすぎる人は、適応障害の症状が出ても「甘えだ」「慣れていないだけだ」と自分を追い込んで悪化させてしまいがちです。
がんばることはとても素敵なことですが、時には体調に合わせてペースダウンすることも必要です。