経済学において、『すべての財・サービスの経済的価値はそれらのものの希少性に依存する』としてG.Casselは財の価値を規定する重要な概念として希少性の原理を唱えました。
心理テクニックにおいて、希少性の原理を言う場合には、『何かの機会の価値を高く見せかけるためには、その機会を希少なものであると相手に信じさせればよい』といった内容になります。
希少性の原理に基づく手法としては、競争者の存在をちらつかせる、アクセスや個数を制限する、締め切りを設ける、いったん与えておいて取り上げるといった手法があげられます。
実社会において、希少性の原理は様々な場面で活用されています。あなたも希少性の原則を自分の生活に役立ててみませんか?
相手と競合するライバルの存在を告げる
自分の持っているものをできるだけ相手に高く売りつけたいという場合、『他のひとも欲しがっている』と告げて、複数の買い手に誰がもっともよい条件を出せるのか競わせるというのは、典型的な希少性の原則の利用です。
この手法は、会社のビジネスのみに限らず、ネット上のオークションのような個人間の売買、恋愛関係や友人関係にも使うことができます。
競合するライバルの存在を相手に告げることによって、『ぼんやりしていると競合する者に機会を奪われてしまうかもしれない』と相手に思わせるのです。自分の持っているもの(恋愛などならば自分自身です)の希少性を相手に知覚させるのです。
そうすれば、相手はあなたの持っているものを高く評価してくれるようになるでしょう。
あなたの持っているものを欲しがるひとが本当に複数いるのでしたら、その競争の結果で決まる評価は市場の正当な評価です。
なお、本当は競合する者がいなくても、競合する者がいるという嘘を相手に信じ込ませることに成功すれば、やはり、自分の持っているものを高く評価させることもできます。
手に入る機会が少ないように見せかける
相手に飢餓感を与えれば、大した値打ちのないものでも値打ち以上に売れる、というのが心理テクニックとしての希少性の原理を活用する手法のひとつです。
ところで、世の中には、黒い嘘、白い嘘、統計という3種類の嘘があると言われますが、罪のない白い嘘と言うのは確かに存在します。
旅行に行ったときに買ってきたお土産を渡すのにも、『これは人気商品で残り1個しかなかったの』と嘘でも言うと、相手に喜んでもらえます。
相手を喜ばせるための罪のない白い嘘は、普通に世間の許容範囲です。
なお、恋愛において、色々と理由をつけて、会う機会をしぼった方が相手の飢餓感をかきたてることができるでしょう。これを希少性の原理の有効な活用例として取り上げる方もいます。
ただ、恋は駆け引きとも言いますが、自己中心的な動機に基づく黒い嘘は、相手に対して失礼です。そんな恋愛は、多くの場合、長続きしません。
機会の時間制限を設ける
時間制限を設けるというのも相手に機会の希少性を知覚させることができます。スーパーのタイムセールなどは好例です。
時間は止まることなく流れ続けるものですから、機会の時間制限は相手に絶え間なく希少性を意識させることができます。
あなたが本当に忙しいときに他人から物事を頼まれた場合、自分が忙しいことをはっきり告げて、『何時までならば、あなたのために時間を取ってあげる』と時間制限を設けましょう。
もちろん、忙しいときに、時間の歯止めもなく他人の都合に振り回されることを回避するという意味もあります。
それとは別に、心理テクニックとしての希少性の原理の活用として、時間制限を設けた方が、あなたに時間をとってもらうことの希少性を相手に強く意識させるので、感謝される度合いも強くなります。
いったん与えておいて取り上げる
心理テクニックとしての希少性の原則の活用方法として、いったん与えておいて取り上げるということも言われます。
手に入ったはずだという想いがあればこそ、それを失ったときの悔しさがあり、相手の飢餓感が強まるからです。
買ってあげたおもちゃを大切にしない子どもがいる場合、『いらないならば返しなさい』と親が取り上げるようなことは、昔からよくある話です。
子どもに物の大切さを教えるという正しい目的のために、心理テクニックとしての希少性の原則の活用する好例です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
心理テクニックとしての希少性の原理は、使い方やタイミングによっては、最初の自分の意図に反する効果を招く恐れも存在します。
むやみやたらに相手を焦らして飢餓感をあおるのではなく、適切な使い方とタイミングを心がけてください。